STATEMENT
本展は、「借景」という日本独自の美意識を手がかりに写真と暮らしのあいだにある静かな関係性を見つめ直す試みである。
私は日頃、Hasselbladという中判フィルムカメラで風景を撮影している。
スクエアフォーマットのファインダーを覗き込むたび、そこに立ち上がるのは小さな窓を通して世界をそっと覗き見るような感覚である。
光や空気、時間の層がその中に静かに浮かび上がり、現実と夢のあわいのような風景が姿を現す。
その感覚は「借景」という言葉が本来持つ、外の風景を内に招き入れる思想と深く呼応している。
展示の会場は、アーキトリップ代表桑名氏が自らの手でリノベーションした住まいである。
そこには建築としての美しさに加え、暮らしの営みが日々息づいている。
家具や器、本棚や照明など、ひとつひとつに生活の気配が宿る空間の中で写真を眺める時間は親密であたたかなものとなるだろう。
この家の周囲には一面に桃畑が広がり、遠くには山々の稜線が連なっている。
春には薄紅の花が咲き、季節とともに風景はゆっくりと表情を変えていく。
大きな窓からは、そうした移ろいが暮らしの中にすっと差し込んでくる。
ここでは「借景」という言葉が抽象ではなく、ごく身近な感覚として日常に息づいているのだ。
本展ではその「借景」の精神を、写真というかたちで住まいの中に取り入れ風景が暮らしに寄り添う在り方を提示している。
写真は単なる装飾ではなく、もうひとつの窓としてあるいは静かに語りかける風のように、見る者の心に作用する。
旅先で出会った光景や、ふと立ち止まった先にあった静謐な瞬間それらを“額”というフレームに収め、住まいの中に据えることで私たちの日常はささやかに、しかし確かに変化を始めるー。

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INSTALLATION VIEWS

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